じわるミステリアスアンソロジー「別世界からのメッセージ Dispatches from elsewhere」が中毒性高め!

ミステリー
執事見習い
執事見習い

この作品、一言でいえば「癖つよめ」の賛否両論な作品かもしれませんが、私はぐっと引き込まれました。人生にモヤモヤする人々に贈るアンソロジー。日常に隠されたメッセージに気が付けば、世界観やあなた自身が変わってゆくという作品です。

2013年公開のドキュメンタリーで、サンフランシスコにて実際に行われたリアリティー・ゲームを題材にした「The Institute」に着想を得ていますが、この映画も面白いです。

今回はこの「別世界からのメッセージ」を、海外ドラマは観たことないという方向けにはもちろん、次に何観ようか迷っているという方も参考にできるようにあらすじ以外にも注目のキャスト、製作者、脚本家などにも焦点をあてながら紹介したいと思います。

あなたにもハマりそう?まずはざっくりご紹介まで

配信:Amazon Prime Video(月額500円~/2020年7月現在)  

期数:第1(2020年公開)から 

主演ジェイソン・シーゲル(俳優/脚本家)、アンドレ3000(アウトキャストの一員。歌手)、サリー・フィールド(アカデミー賞主演女優賞2度・ゴールデングローブ賞受賞の名女優)、イヴ・リンドリー(トランスウーマンのモデルで今作が女優として初の大役となる)

プロデューサー:クリエイター兼エグゼクティブ・プロデューサーとしてジェイソン・シーゲル(ピーター役)の他、AMCのプロデューサー、映画「ドラゴンタトゥーの女」のスコット・ルーディンなど7名のプロデューサーによる作品。

1話ごとにフォーカスされる主人公が違うスタイルで進行します。1話は約1時間。ミステリーであり、大人向けのファンタジー。

この作品が好きになりそうな人:

✓ミステリー好き

✓物語やメッセージのしっかりした作品が観たい

✓ロマンチストの方(恋愛要素は薄目ではあります)

✓映画ファン(オマージュ満載です)

✓アート好き(物語に重要な意味を持ちます)

おすすめできない人:

×メタ発言(キャラクターが視聴者に話しかけてくる)に抵抗がある

×暇つぶしのながら見ドラマを探している人(メタファーが多くて)

×ストレートにわかりやすい内容が好き

✓が多かった人はとりあえずこれだけ読んで決めてみて!

主人公はひょんなことから謎の”ゲーム”に参加することになり、同じチームとなった赤の他人の4人組。内容はいわゆる宝探しのようなもので、4人のチームは街中に隠されたヒントを追いつつ、最終目的に近づいていく形です。参加者は、とある少女を見つけるように指示を出され、彼女の消息を追います。視聴者は各話冒頭に、話ごとにフォーカスされるキャラクターに自分を重ね合わせながら作品を見進めていくことを促され、物語はそれぞれの抱える問題と心の動きを追いつつ、攻略とともに進行していきます。

 現実世界に隠されたヒントを探しながら進行してゆくゲームとその大掛かりな演出や仕掛けに、参加者は単純に遊びとして楽しむ者、何かの商品のプロモーションであると疑う者、何かの陰謀だと信じる者、少女が本当に消息不明になっていると信じ使命感に燃える人…ゲームの目的は何なのかという謎とともに、ゲームへの参加で人々にもたらされる変化に注目してご覧いただけると、物語のメッセージを受け取れるのではないでしょうか。

と、いうことで気になった方はまずは予告編をどうぞ。残念ながら英語版しかなかったので、そのうち日本語字幕をつけてご紹介したいと思います。

Dispatches from Elsewhere S1 | Official Trailer | Coming May 2020 | Amazon Prime Video
Amazon Prime Video オーストラリア・ニュージーランド圏チャンネルによる予告編
配信はAmazonの独占!

単発購入もできますが、かなり割高になります。サブスクリプションは30日間の無料トライアルを行っていますので、まずはそちらを利用してご覧ください。

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まだ観ようかって踏み切れない方へ、この作品の魅力をさらに掘り下げて、原作の映画「The Institute」の事、キャストや製作陣のことをご紹介させてくださいませ。

作品を彩る魅力的なキャストたち

ジェイソン・シーゲル(ピーター)

映画やTVドラマでも出演作の多いジェイソン・シーゲル。「The Muppets」の脚本製作総指揮など、そんなあの作品で~と思う方でした。本作のピーターというキャラクターは自分がなく、好みや楽しみにも主体性がない、毎日が意味のない繰り返しをエンドレスに続けているような、生気がない(が、そのことに大きな問題も感じていない天然?)とも言える人間です。彼はゲームを通じて日常風景の意味を変えるような思いがけず素晴らしい体験をして使命感に燃えます。

イヴ・リンドリー(シモーヌ)

彼女はトランスウーマンのモデル(バーニーズ・ニューヨークの広告など)で、女優としては新人です。作中のシモーヌもトランスウーマンで、セクシュアルマイノリティーとしての孤独、男性から女性に生まれ変わったこと、他人から受け入れられることを望みつつ、どこにいても「自分は場違いな存在だ」と拒絶の恐怖から他人を避けて生きてきました。ピーターは自由で生き生きとしているシモーヌに憧れますが、彼の気が付かないところで、彼女はとても臆病です。美術を学んでいた大学を中退するなど人生にも悩んでいた彼女はゲームを通じてどう変化してゆくのか。イヴ自身もセクシュアルマイノリティーとして、実母に受け入れてもらえなかったということです。彼女はアメリカの中でも進歩的でリベラルなニューヨークの出身ということで、最近はLGBTQの芸能界での活躍もめざましいですが、アメリカ全体としてはキリスト教徒が多く、性自覚や同性愛についてなどは保守的な考えや偏見が多い国でもあります(この問題については別作品ですが、FXによるライアン・マーフィー脚本のドラマ「POSE」で鮮明に表現されています)。ただ、この作品ではセクシュアリティよりも、それに起因する事はあっても、彼女の抱える他の課題に対してフォーカスされていたり、番組自体はLGBTQにフォーカスしたものではなく、こういうキャラクターがセクシュアリティというアイデンティティを超えてフォーカスされるのは、新しい時代かもしれないと思いながら観ていました。

アンドレ3000(フレドウィン)

作中のフレドウィンはたぐいまれなる記憶力をもつ天才で、ゲームはデータ収集のための陰謀に違いないと信じ、真相を暴こうとして躍起になります。強迫的な妄想にとりつかれたかのように、他人を顧みない極端な姿勢と言で「浮いた」存在である彼はゲームを通じてどう変わってゆくのか。私はあまりラップは好んで聞くことはないので、すっとわかりませんでしたが、アンドレはアウトキャストというミュージシャン(グループ)の一員なんですよね。私も「Hey Ya!」は耳なじみがあって、この曲の人だったんか~という発見がありました。映画にも何作か出演経験があるようです。

OutKast – Hey Ya! (Official Music Video)
VEVOによるYOUTUBE掲載のMV「Hey Ya!」

サリー・フィールド(ジャニス)

1979年の映画「ノーマ・レイ」でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得。1984年の「プレイス・イン・ザハート」でもアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞を取るなど、その他も映画での活躍が多い女優さんです。最近では2012年の「リンカーン」で大統領の妻を演じてアカデミー賞の助演女優賞にノミネートしていますが、惜しくも受賞とはなりませんでした。その他「アメイジング・スパイダーマン」のシリーズや、TVドラマではERにゲスト出演してエミー賞のゲスト女優賞を獲ったり、同じくエミー賞を獲った「ブラザーズ&シスターズ」ではノラ・ウォーカー役以外にも、一部ではプロデューサーとしても活躍しています。本作のジャニスは、結婚や出産・子育てにより自分の希望よりも家族を優先してきた母親であり妻でした。夫との関係の変化で、自分の行く末に悩んでいます。

英語のみになりますが、ジェイソン・シーゲルのインタビューに作品をよみとくヒントがありました

Jason Segel's "Dispatches from Elsewhere" Is Magic As An Act Of Defiance
YoutubeのThe Late Show with Stephen Colbertチャンネルよりジェイソン・シーゲルのインタビュー

映像作品を脚本から手掛けて作りたいと考えていたジェイソンは、どんな作品が良いか悩んでいた時に原案のドキュメンタリー映画「The Institute」に出会い、「これだ!」と思ったそう。作中のゲームを考案した人間の連絡先を調べて、映像化のアイデアを話したところ「今はダメ」とだけ言われて電話をチンと切られてしまったとか。

何がどう「ダメ」だったんだろう…?電話のタイミングなのか、映像化のこと…?困惑したジェイソンのもとに、しばらくして後日、ドキュメンタリーの舞台であったサンフランシスコのとある場所と時間を指定するメールが届きます(メールアドレスは教えていなかったのに!)。実際に行ってみると、そこにはゲームと同様の演出がされた空間と、彼専用のイベントが用意されていて、実際に不思議な体験をしたのだそう。ドラマの脚本を作るうえでとても参考になったとのことで、作中にも同じシチュエーションの場面が出てきます。

作品をより理解するためのヒントが原案の映画にあった!ドラマを視聴後の答え合わせとして視聴をおススメします

「別世界からのメッセージ」シーズン1の終わり方には賛否両論あるかもしれません。複雑な構造でもありますし、いわゆるすっきりとした終わり方ではなく、ジェイソン・シーゲルも「物語はこれで終わりというわけではない」とシーズン2について言及もしています。作中に登場する「聖なる悠然(divine nonchalance)」「別世界(elsewhere)」とは何だろうか?作品やゲームを通じて、何をもたらしたかったのか?作中の情報だけでは正直、私はすっきりしなかった方だったのですが、なぜかどうしても気になったので原案とされた映画を視聴(Amazonで400円台だったので)してみました。

原作:The Institute

サンフランシスコで数年の期間をかけて行われた、街を舞台に進行するゲーム「Jejune Institute」。アートやその不思議な世界観に魅せられた参加者からカルト的人気を誇ったこのゲームを、参加者や考案者のインタビューを通じて、その目的や参加者にもたらした影響を紐解いていくドキュメンタリー映画です。Youtubeでは英語のコンテンツしか見つけられませんでしたが、なんと!

Amazonに日本語字幕の予告編がありました!予告編は無料

本作はドキュメンタリーなので、演出や脚本であえて見えにくくしているドラマと違い、映画では割とストレートな表現がされている印象で、「聖なるノンシャランス(divine nonchalance/ドラマでは聖なる悠然と訳されている)」や「エルスウェア(Elsewhre/ドラマでは別世界)」「Jejune」の意味など用語が解説(あるいは参加者による解読)されています。

ゲームの考案者は「不思議の国のアリス」のテーマパークでの体験から、テーマパークではない現実で同じような体験を提供するスキームができないかと考えたそう。ジェフ・ハル(考案者)によれば、テーマパークの中では標識に書かれた謎を解いたり、鍵を手に入れながらその世界を楽しんだそう。曰く「そこには不思議の世界と魔法があるようだった」。そしてテーマパークを出て現実世界に戻り思ったことは、この魔法がテーマパークの中と外という人間が作り出した想像上の空間の区切りで、存在したりしなかったりするのはどうしてか?と考え、この感覚を現実世界(テーマパークの外)で展開できる方法を考えようとしたんだそうです。「ゲームを進めることで過程は現実世界のストーリーの一部となり、やがてゲームの中での行動が現実世界での意思決定に影響してゆくのだ。ゲームの脚色として、不思議さや魔法のような感覚を演出したことは事実だが、これはゲームの域を出ないものだった」とは、考案者の主張(あるいは表向きの?)ですが、参加者にとってもそうだったのでしょうか?ゲーム中にケガをしたり、建築物に不法侵入したり、自分は組織的に狙われていると通報したり…ゲームとして片づけられないほどのめり込んだ熱狂者はどこまで行ってしまうのか?ゲームは最終的にどうなる?作中では、ドラマのクレア役のモデルとなっているエヴァという女性についてもフォーカスしています。

「Jejune Institute」は、最近はやりのリアル脱出ゲームなどの謎解き系、またはブロードウェイの新スタイル「イマーシブ・シアター」(Sleep No More)の先駆的なものだったのかなと感じます。サービスを提供するうえで、安全に楽しめることを担保する事が必須になる以上、同じような取り組みをするとしたらやはりテーマパークという空間が必要でしょうが、私はこんなイベントがあったら参加してみたいと思ってしまいます。

ご視聴はAmazon Prime Videoの独占配信!

ジェイソン・シーゲルが本作で試みたのは、映画では参加者と考案者へのインタビューという形式で紹介されたこのゲームを、実際のプレイヤーや考案者を主人公としながら、参加者に訪れた変化や、考案者の目論見を描くことだと考えてゆくと、脚本に合点がいってくると思いました。シーズン1の終わり方にクエスチョンという方は、ぜひドキュメンタリー映画版の視聴もしてみてください

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映画「The Institute」の視聴はこちらから!

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